マンションを売却すると、利益がでるケースがあります。特に不動産価格が底値付近だった2012年前後に物件を購入している場合、その後の不動産価格の上昇によって利益が生まれている場合が多いようです。
さて、不動産の売却によって利益が発生した場合、譲渡所得税を支払わなければいけません。もちろん、3,000万円までの特別控除はありますが、住宅ローン減税と併用できないこともあって、買い替えをする場合、3,000万円の特別控除の適用を諦めてしまうケースは多いのではないでしょうか。
私たち家族も同様のケースでした。売却で利益が出る一方、新たにマンションを購入するために住宅ローンを組む必要があったため、特別控除の適用を諦めていました。
ですが、調べていくうちに住宅ローン減税を受けつつも、売却益の一部を特別控除の対象とすることができることが判明しました。
売却する不動産が共有名義だと譲渡所得税を減らせるかも
実のところ、仕組みは簡単です。売却する不動産の名義が共有なら、どちらか一方が住宅ローン減税を受け、その一方が譲渡所得税の特別控除を適用すれば良いだけです。
- 夫は住宅ローン減税を受ける。妻は特別控除を受ける。
少し詳しく見ていきましょう。
売却する不動産が共有名義の場合、売却益は持分割合に応じる
譲渡所得は、「売却代金 ー (取得費+譲渡費用)」で計算されます。ここまでは普通ですね。そして見落としがちなのは、共有割合に応じて譲渡所得も分割されること。夫婦2名が4,000万円でマンションを購入し、4,800万円で売却したケースを考えて見ましょう。
- 売却する不動産の共有割合は1:1
- 4,000万円で購入し、4,800万円で売却
- 譲渡にかかった諸費用は200万円
- 買換え物件の資金は、夫のみ住宅ローン利用、妻はローンを利用しない
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夫
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妻
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売却による収入金額
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4,800万×1/2=2,400万円
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4,800万×1/2=2,400万円
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取得費
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4,000万×1/2=2,000万円
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4,000万×1/2=2,000万円
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譲渡費用
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200万×1/2=100万円
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200万×1/2=100万円
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譲渡益
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2,400万円ー(2,000万円+100万円)=300万円
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2,400万円ー(2,000万円+100万円)=300万円
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特別控除
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住宅ローン減税を適用するため、なし
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3,000万円特別控除適用
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譲渡所得
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300万円
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0万円
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税金
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300万×39.63%=約118万円
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なし
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税金に着目してください。物件の売買で夫婦合わせて600万円の利益が発生しているのですが、税金の対象となる譲渡所得は300万円となっています。これは、妻の譲渡所得については特別控除を受けているため。
譲渡所得が分割されることを知らずに譲渡所得を全て夫のものと計算してしまうと、本来支払う必要のない妻の分の譲渡所得まで課税対象となってしまいます。
共有名義の場合のメリットも要確認です
不動産の共有名義については、デメリットばかりが強調されますがメリットも存在しています。特に今回のケースのように、最初に購入したマンションは夫婦共有、買い替え時は夫のみ住宅ローンを組む、という場合は共有名義のメリットが出てきます。
特別控除によって、妻の譲渡所得税が無くなるからです。
譲渡所得は、持分割合に応じることは覚えておきましょう。確定申告の際は、誤って妻の分の所得を合算しないようにしましょうね。そうでないと、不要な税金を支払うことになってしまいますよ。